留学して半年から1年 - 学習力
留学当初からのハンディを乗り越えて、留学生たちは半年あたりから
1年後までは混乱の少ないいわば精神的な安定期に入ります。
英語力も留学当初から比較すれば向上し、
自分の言いたいことが素直に言えるようにもなる時期です。
英語圏の人たちの考え方がある程度までわかりますから、
極端な苛立ちも収まり、彼らと付き合うための頭のスイッチが
ある程度は切り替えられるようになります。
学業については、それほど簡単には頭のスイッチを切り替えて
勉強モードに自在に突入できるというふうに
都合よくはできていないのが人間の自然の姿であると思います。
日本での学習と異なることは、宿題、課題、授業中の発言などが
明確にかつ生徒にもわかるように成績に反映されることです。
小テスト(クイズと呼ばれます)も頻繁に行なわれることが多く、
試験前一週間から猛勉強という日本のパターンが到底通用しないという事実を
日本からの留学生たちはこの頃になって実感するようになります。
学習技術を日本で小さなときから、塾、家庭教師などを通じて習得し、
学力水準試験、学校の定期考査で自分が上位にあることになれてきた
生徒たちは、頂点をめざすという習慣から、比較的留学早期に新たな
環境でのあらたな学習スタイルを確立しようとします。しかし、
そこまで勉強に慣れている生徒はそれほど多くはありません。
余談ですが、地方の公立中学校でトップクラスの成績(ほぼオール5)の生徒が
その学習力を買われて、留学に必要な英語力はほとんどなかったのですが、
テンスクールズに続く難関校に10年生(高1)として入学できました。
1年後、その学校の副校長と会う機会があり、彼のことをたずねると、
なんと彼が話しているのを「見たことも聞いたこともない」というのです。
副校長からの話をこの生徒のお母さんに告げると、
「あの子のプライドでしょうね。日本の学校でトップだったから、
自分で納得のゆかない話ができないのでしょう。毎日、寝る時間も惜しんで、
勉強していると言ってました。」
彼は2年目は気さくに話せるようになったのですが、
15歳にして相当の精神力の持ち主でした。
余談を終わります。
一般には、多くの留学生が英語圏式の記述問題のロジックやその分量に
対応することが簡単にはうまく行きません。勉強量の多さ、まだまだ不完全な英語力、
日々の読書課題と、作文課題など、精神的安定期の次に留学生が経験するのは、
学習力不足です。
「成績が一向に良くならないのはどーゆうわけ」というお母さんの意識が
あるとすれば、
「ここで何が起こってるかわかってないくせに、何だよ」という
子どもたちの意識が芽生えることでしょう。
評論、解説は簡単なのですが、親子の当事者同士は、「話し合い」による
お互いの合意点に簡単には達し得ないのが現実であると思います。
子どもたちが成績不振で焦燥の念にかられていれば、
多くのお母さんが「人生は長い、生き急ぐ必要はない」という主旨の
発言をしますし、それで子どもたちのこころは
とても良い状態になるのだと思います。
むしろ、結果を求めて、その過程を自分流に解釈することが
多いのはお父さんのほうかも知れません。
お母さんが地道に海の向こうの本人と向き合って、
新聞の切り抜きを送り、自分の日記をしたためてまで、
本人をサポートしている状況を、お父さんが知らず、
「海外でもまれているから、少しは大人になったか」といった発言に、
手当たり次第に身のまわりにあるものを投げつけたある女の子の
話を、「今は昔・・・」と語ったお母さんがいました。