言葉の真実-ある生徒のひとこと2
「マイネイムイズ・・・」極めて簡単なフレーズに違いありませんが、
私はこのフレーズの持つそれぞれの生徒たちの精神が忘れられません。
私は多くの英語圏の学校を志願者およびその家族と訪問します。
それぞれの志願者の十人十色のリアクションや考え方に彼らの生きてきた
その道を感じます。そして、その道を自分なりにたどってみます。
正しいか否かという正解を私は探しているのではありません。
彼らが何にこころを動かされるのか、その原点が知りたいのです。
雰囲気に圧倒され、あるいは現実の英語という言葉に接して、
あまりにも日本で学んだことと「話が違う」状況に
どのようにして対応したらよいのか、混乱している子どもたちを、
見出しますが、あっという間に彼らが変わるのです。
これほど明確にかつ短時間に「結果」が得られる学習はないと思います。
彼らは○×式をあらため、自分流を考案し、どうにかして自己主張をしようと
自然に考え始めると私は考えます。
私はなるべく余計な口をはさまず、通訳も要点だけにとどめます。
「わからないことは聞く」という世界に突入するのがわかっているのですから、
その時期をことさら恣意的にずらす必要はありません。
生徒と2人きりで旅をしたときは、彼らの主体性の変化が顕著です。
最初の学校では「何とか言え」と思うくらい、何も話せないのですが、
最後の学校では私が自己紹介の段階で口を挟む必要はありません。
成田空港に到着したとき、「あっ、もう日本語なんですね」と言う彼らの
心境は、ホームに到着したという安堵感よりも、
アウェイでの辛さのほうが心地よいということなのかもしれません。
辛く、苦しく、苦労であっても、そこは全くの未知の世界であり
それを受け入れ、自分で選択し判断できるが心地よく感じられる。
素直な意味で「若さ」なのだと思います。
余談ですが、アジアマーケット開拓に積極的な日本ユニリーバの人事部長(女性)
のスピーチを聞いたことがあります。彼女は若手社員を1年ほど、どんどん海外に
出すのだそうです。35歳を過ぎた人は出さないのだそうです。自他共に良い結果を生まないことがわかっているからだそうです。若い人たちの語学力はそれほど問題
ではなく、送り込まれた地域で、地元の人たちを巻き込んで、目標を達成するために「何をするか」という問題解決力とリーダーシップが若ければ若いほど早く身につく
と言います。「自分やり方」が固定されているひとは、その呪縛から離れられない
とも言っていました。
若さというのは、物事をストレートに見ることができる、既成概念にとらわれない、
言葉を学ぶスピードが速いなどの資質を持っているようです。もちろん、私は
若さの精神は決して年齢では計れないと思いますが・・・。
余談を終わります。
「生活になれることと、勉強は別」かもしれません。
しかし、何人の生徒が「もう日本(語)なのか」という正直な感慨を
今までに持てたでしょうか。
サマースクールや短期の研修などがきっかけで留学する生徒が多いのは、
未知への好奇心のみならず、「自分が発揮できる」と感じられるからです。
感動が大きければ大きいほど、彼らの可能性のふれ幅も大きい、
その可能性を実現化できるかどうか、それを偏差値で判定することは
既成概念からの呪縛にほかならない。
私は精神だけは若く保ちたいと思っています。