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#3 組織と個人 - 教育のグランドデザイン

ボーディングスクールと長年付き合っていると、そこで働いている人たちの個性にとても心を打たれることがあります。
そのすべてがいいことばかりではありません。いいことと良くないところ、現実的には半々といえます。
たとえば、年功序列や終身雇用という労働観がないアメリカの社会においては、定年がなく、仕事は数年で次に移るということが、当たり前と考えられています。「転がる石には苔が生えない」というイギリス発生のことわざをアメリカでは、活動的に動き回っている人を称賛する意味で取られると辞書にはありますが、日本の「君が代」の「苔のむすまで」とは将に好対照です。
このような社会性の基礎の上に築かれた学校での先生のありかたは、ボーディングスクールにおいては、現代にあっても手作りに徹したものになります。しかしながら、とにかく人の回転が速く、日本からの留学生たちは、彼らの転身を組織に対する信頼と忠誠のなさとして捉えることも多く、
「この学校は大丈夫だろうか」、
「アメリカ人は信用できない」、
「先生たちはわがまま勝手」、
「口先だけの人たち」、
などと手厳しい批判が子どもたちから親に聞こえてくる場合も多々あります。
一方で組織の規範を軽々と乗り越えて生徒のために尽くしている先生もたくさんいます。
「この先生、とってもいい人なんです」
「アドバイザーの先生が私たちアドバイジーを日本食レストランに招待してくれました」
「先生の家族と野球を見に行きました」
など、先生という立場がボーディングスクールでは、やすやすと個人と個人の繋がりに変化します。
ひとクラスの人数が10人から15人くらいであれば、生徒ひとり一人とがっちり繋がることも可能なのだと思います。40名のクラスで同じことは物理的に無理だと思います。
ディスカッション、プレゼンテーション、パソコンを使ったリサーチなどが日常に取り入れられているボーディングスクールでは、日本的教育思考からすれば、どこで「覚えるという作業を行うのか」という疑問が湧いてきそうですが、それは生徒が自主的にやり繰りするものと考えられているのではないかと思います。
日本で暗記型の教育に慣れてしまっている生徒からすると、留学によって全く違った教育の現場に投げ出されるわけですが、その世界が厭になって、帰国してしまう生徒は皆無に等しいのです。
ボーディングスクールの先生たちは、教えるべきことをマニュアルに従って授業をすすめているのではなくて、自分自身を授業を通して語っているのかもしれません。

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