ボーディングスクールの本音2 ― 寮の先生たち
ボーディングスクールを訪問して日本から来た人たちが驚くこと、それは学校のキャンパスで犬が散見されること、そして寮には小さな子どもたちがいることです。「どうして(中学)高校に犬や子どもたちがいるの」ということになります。
大きな犬も子どもたちもみな、寮生と一緒に住んでいる先生の家族の一員です。通いの学校が大多数を占める日本の学校では到底見受けられない光景です。寮生たちは犬の名前も先生の子どもたちの名前ももちろん知っています。
ボーディングスクールの寮は平屋建てあるいは、2-3階建の大きな家です。各フロアには10-20名くらいの生徒が住んでいますが、階ごとに2組くらいの寮を管理する先生家族が一緒に住みます。
寮を管理している先生の家族にしてみると、そのプライバシーは保証されているとはいえません。寮を管理する先生にとっては、生徒ひとり一人がわが子と同じですから、彼らが夜中に体調を崩すこともあるでしょうし、すべての生徒が品行方正であることのほうが不思議です。消灯時間を守らない生徒や、門限を破る生徒、そして話し好きな生徒や無口な生徒など、わが子と思えなければ真正面から彼らにぶつかれないでしょうし、逆に受け止められないでしょう。
確かに、通いの学校の先生と比べればボーディングスクールの先生たちの生徒管理の大変さは筆舌に尽くしがたいものがあります。それでも、300余りのボーディングスクールのある北米、小学校から寮生を受け入れているイギリスやヨーロッパのボーディングスクールが健全に機能しているのは、そこで教える先生たちの本音としての子ども好き、教えること好きという教育文化があるのだと思います。
ボーディングスクールに職を求める人たちは、教育畑を歩いてきた人たちばかりではありません。金融、サービス、公務員など、転職が当たり前のアメリカ社会においては、先生やアドミッションスタッフ、そして学校職員の人たちの多彩な経歴の持ち主です。そこに馴染んでいる人は、何と70才を超える高齢であっても、教鞭を取っているのです。
もちろん、その反対に馴染まない人は、数か月で去っていきます。私の知る限りですが、ボーディングスクールのアドミッションスタッフはおおよそ3年から5年のサイクルで学校を変えます。このサイクルで彼らの立場は変わる度にアップグレードしていくのです。
留学生からすると、日本の学校に比べて転職のサイクルがボーディングスクールでは早いようで、「みな、いなくなってしまう」と思えるようです。そして、日本の教育の世界もいつかはボーディングスクールのようになるかもしれません。