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春駒とクリスチャン

90年代半ばの話なのですが、私は岐阜県にあるある町の教育委員会の依頼で
その町の中学生の海外研修プログラムを手掛けたことがありました。
長良川を眼下に見下ろすその町の教育委員長とのご縁で、
その町の三十人あまりの中学生を毎年八月に、アメリカペンシルバニア州、
ランカスターに十日あまり引率しました。
この地域は敬虔なクリスチャンが多いところです。
余談ですが、アメリカの宗教についてです。
大雑把にいって、アメリカ人の六割がクリスチャンだそうです。
そのなかの六割がプロテスタント、そしてそのプロテスタントの六割が、
主流派と呼ばれている、メソディスト、プレスビテリアン(長老会派)、
コングリゲーショナル、エピスコパリアン、ルーテルに属しているそうです。
これらの主流派以外にも、ペンシルバニア州には、
アーミッシュと呼ばれるプロテスタントの村が点在している地域でもあります。
彼らは、いまだに文明の利器(電気、車、電話など)を一切使わない
生活を守っています。
岐阜の子どもたちとの十日間のホームステイ生活は、
私にとっても楽しいものでした。
特に、ワシントンDCにあるスミソニアン博物館がとても印象に残っています。
自然、宇宙、中世芸術、近代芸術、アメリカ史、航空などの分野別に
博物館が並んでいます。一日かけてもとても見終えるものではありません。
最初の三年ほどは恐竜、宇宙船、世界一大きなダイヤなど、
目立つものを選んで見学していましたが、それ以降の三年間は、
絵画に引きつけられました。
教科書でしか見たことのない絵が目の前にたくさん置いてあるのです。
ダビンチの時代からピカソに至るまで、広いスペースに、
絵画と鑑賞する人を分かつ柵もガラスも何もなく、
自分の目の前数十センチのところに、世界の名作が数えきれないくらい
置いてあるのです。
中学生たちは、もっぱらアポロ宇宙船やティラノサウルスの骨などに
夢中なようでしたが、あのコレクションには圧倒されました。
さて、表題、「春駒とクリスチャン」の春駒とは
子どもたちの町でお盆の時に、郡上踊りとして知られる、ポピュラーな曲です。
子どもたちの受け入れは、この地域のクリスチャンファミリーを
中心に行われていいました。
ホストファミリーを皆が集まる教会に招待して、
日本の子どもたちが彼らに日本の文化を披露するのですが、
誰もが知っている「春駒」を紹介しようということで、
町の教育長さんなどは、輪の中心で自慢げに踊っていました。
それを見ていた受け入れ団体の日系のアメリカスタッフが、
「これは、死者をよみがえらせるために踊られるものだ。そのような踊りはこの教会にはふさわしくない。即刻中止したほうがいい」と言いだしたのです。
「何をいっているんだ」と私は反射的に叫んでいました。
「君は、私たちの文化を冒とくする気か」とまでは言わなかったと思いますが、
「死者をよみがえらせるなどとは、だれも思っていない。なくなった家族を思い、彼らにありがとうの気持ちを一年に一度、あらわしているだけではないか」
などと、冷静に考えるとクリスチャンスタッフの意見と
かみ合っていない意見を私は述べていました。
彼らの宗教観に驚き、皆が盛り上がっている最中にも、言うべきことは
はっきりと言う彼らの態度に私は驚きました。
受け入れ団体のボス、ルース・パワーズさんは、
「私にはこの事態を判断する知識がないから」ということで、
結局、私に一任してくれたので、春駒を終えることができました。
宗教は何のためにあるのかと思います。
そして、学問も、社会制度も同じことではないかと思います。
そのための「学び」を私は十代の子どもたちと一緒に
考え続けたいと思っています。

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