高校生の留学体験 ― 予測できないチャンスとピンチ(*中筋素生君の手記)
自己の一年間の留学体験を「すがすがしい一年」と振り返る中筋素生君ですが、何がどうしてすがすがしいか、ポジティブな言葉で説明してくれています。要点を網羅すると次のようになります。
・ホストファミリー(おばあちゃんひとりの家庭)が良かった
・学校でたくさんの友だちができた
・すばらしい先生やボランティア活動の人々との出会いがあった
・うまいピザが(いつでも)食べられた
・人に愛されたそして、その分人を愛せた
留学をするにあたって「いろいろと考えた」という素生君ですが、英語力のなさはかなり心配だったようです。ところが、「何とかなるサ」という気持ちで臨んだら、「本当に何とかなってしまった」と彼は言います。
「困っている時には、どこかに救いの手がある、状況を打開するうまい手があると」思うことで、気楽に思い切ってことにあたることができたそうです。そして、かれは、生きていくなかで合理性(たぶん筋道立てて考えることだと思います)と楽天性がとても重要との認識に至ります。
「生きているといろいろな人に出会う。いろいろなことに直面する。チャンスもあれば、ピンチもある。予測なんてつかないし、つけられっこない。でも、いろんなことを知るたびに(自分の)人生は少しずつ幸せになっていく。それがわかると、旅や冒険ほど楽しいものはない」という彼の留学を終えての感想は、立派で納得できる確かな人生論です。
一年だけ留学しても、これだけ自分の世界を広げることができます。それは、留学故に成し得たマジックではないと私は思います。留学を希望するひとり一人の人たちが、自分のなかの不安と戦い、漠然とした夢や希望に向かって、一歩一歩歩んでいくその努力の結果、拡がってゆく世界の視野ではないでしょうか。すなわち、拡げるのは、あくまでも自分であって、留学そのものではありません。
素生君は、「英語が話せないのに、どうして授業が受けられるだろうか」、「危険な目にあったらどうしよう、どうなってしまうだろう」、「ホストファミリーと気が合わなかったらどうしよう」、「勉強ついていけなかったらどうしよう」、など際限のない弱気な自分に押しつぶされてしまいそうになったこともあるでしょう。しかし、それを結局、打破するのも、人ではなくて自分です。
ぐずぐずと思い悩むよりも、一歩前に出よう、進もうとすれば、かならず前進すると先人たちは諭します。これほど当たり前のこともないでしょうが、そのことに確信を持つまで、人々はとても悩みます。そして、自分で選択をし、その責任を負うことで、成長していくと思います。
「留学期間は『黄金の日々』だった」という彼に、留学と人生をもう少し語ってもらいたいと思っています。
(*注:中筋素生君の手記は成功する留学、小・中・高生の留学2001-2002、106ページに掲載されています。)