定年のない国、アメリカ
サンフランシスコで35年ほど暮らしている私の友人によるとアメリカには
定年がないのだそうです。私はにわかにはそのことが信じ難く、
あれこれと彼に質問をしました。彼は、30年くらい前に永住権を
取得し、その後アメリカ人と結婚しました。地元の大学に通い、
土木工学をマスターし、20年以上にわたって、市役所の水道局に
勤めています。その彼が言うのですから間違えはないでしょう。
彼は私の留学時代の友人です。高校卒業後に、数年日本で働き、
サンフランシスコに渡りました。日本からホンダ750CC、
プロトタイプともいえるKゼロ型を持ってゆくほどのバイク好きな人です。
私も足代わりに現地で購入したホンダDOHC450オフロード仕様に
乗っており、カリフォルニアの海岸線を縦断する1号線を
二人でツーリングに出かけるなど、とても親しくしていました。
さて、彼とのやり取りです。
―定年がないとなると、会社を辞めるのは任意なのですか
「そうだね。こちらでは進退にこだわりがないから、60歳くらいで自然に会社を辞めます。老後にめどがたてば、60歳まで働かない」
―日本では考えられません
「そうでしょうね。ほとんどの日本人はこの現状が信じられないといいます。しかし、国が変われば社会制度も全く変わるわけだから、自国中心じゃなくて、受け入れないとね」
―制度という点では、税制、社会保障、厚生年金なども全く違うでしょうね
「私の場合だけど、サラリーの半分くらいは税金で、手取りは支給額の半分くらいだよ」
―それは、驚きです。その内容を教えてください。
「まず、ガバメントタックス(所得税)で13%、カリフォルニアのタックス(市町民税)10%、ソーシャルセキュリティー(国民年金)10%、ペンションプランで7.5%、メディケアーで10%といった内容だね」
―ペンションプランというのは何ですか
「こちらはね、退職金という制度がない。だから個人が退職後に受け取るお金を給料から差し引いて積み立てをします。仕事を辞めた時に、一括して積立金を受け取るか、あるいは毎月定額を定年後づっと受け取るかは選択できるわけだ」
―日本で言うところの年金ですね
友人の奥さん:「あなたは市役所にづっと勤めているから、ペンションプランの個人負担レートが2.5%くらいだったころも知っているでしょ。今、民間企業では、ペンションプランを廃止しているところも多いわ。
友人:市も経済状態が良くないから来年から12%に引き上げられるらしいよ
―日本でも年金の支払い時期がだんだん遅れてきています。私の息子たちの時代はもう、この制度は機能しなくなるかもしれません
「アメリカも同じ状況です」
資本主義をリードしてきた大国、アメリカと日本ですが、
両国とも、経済的に一昔まえの勢いはありません。
そして、ヨーロッパも同様に思えます。
私は、このような世界状況であるからこそ、若い人たちに
世界を具体的に自分の目で見てもらいたいと思っています。
そして、自分が体験したことをもとにして、
自分の人生の基礎から応用に進んでいってほしいと思います。