就職前線
銀行で国際金融に従事する、ある留学生のお父さんは
「10年先、息子(15歳)が就職するころは、
上司が中国人かもしれません」と私に言いました。
外資系会社に勤めるあるお母さんは、「うちは、日本人志願者は
東大卒しか取りません」と言いました。
大手外資系企業で活躍するお母さんによると、「今年の採用は日本人と
外国人が半分づつ」だそうです。外国人というのは、ヨーロッパ人ではなく、
すべて日本の大学で語学を学んだアジア系の学生ということでした。
その他、私のお世話する留学生の親で自営業、ないしは企業経営を
されている人々は、「近頃の大卒は使えない人材が多い」ということを
よく言われます。
理由は多々あると思いますが、これからの社会、自己選択、自己責任が
より重要になってくると思われるなかで、ネガティブな気持ちをもって
日々の仕事に向かうことほど、辛いことはないでしょう。
我慢して続けても、お互いに良い結果が出ない時代です。
バブル前、日本の企業は新入社員を育てる余裕がありました。
今もその精神は残っていると思います。しかし、昔ほど余裕がない。
結果的にゴーンさんのような新しいタイプのリーダーが企業を動かす。
首切りもいとわず、使えない人材は使える人材と交換される。
人が動くテンポが加速されざるを得ず、ひとつの企業が、
一人の人間の一生涯を保障するというギャランティーが
バブルとともに消滅したと言っていいのではないかと思います。
バブルがはじけてしまったわけですから、企業も組織維持のため、
方向転換をせざるを得ません。
好むと好まざるとにかかわらず、グローバル社会というのは、
内向きだけでは成り立たちません。外を向けば向くほど、
人材マーケットも広がり、アジア全体に目を向ければ、
古き良き時代を彷彿させるような、素直で努力家で勤勉で、
日本語に堪能で優秀な中国人、韓国人、シンガポール人などが
たくさん日本の大学で学んでいると思います。
ご承知のように、日本で生産するよりも、中国のほうが安くでき、
品質にもほとんどかわりがありません。
中国だけでなく、今後はほかのアジアの国々が日本製なみの製品を
日本で作る数分の一のコストで作れるようになると思います。
私は若者たちが、自分たちの目線で海外を
見つめてもらいたいと心から思っています。
英語圏やヨーロッパでなくてもいいのです。
いろいろな世界で、いろいろな人と出会ってもらいたい。
そして、結果的に「自分がやらなければ日本は(世界に)遅れる」、
そんな気概を持つに至ってほしいのです。
豊かで、便利で、安全な日本にいたのでは、
理屈はわかっても、生身の実感というのが、希薄にならざるを得ません。
世界のマーケットを統括する理由が、「このままでは地球が危ない」というのも、
グローバル化のとても大切な概念だと思います。
これから先の命が長い人にこそ、そのような危機感をもって、
就職に取り組んでもらいたいと思います。