留学コンシェルジュ

迷える青年

中学校3年生にして留学をするか否か、するにしても
アメリカにするかニュージーランドにするか、どうしても
決めかねている青年が私に電話をしてきました。
彼とはすでに会っているばかりか、ニュージーランドに2週間の
短期学校体験を私が勧め、彼はそれを実行し、留学の成果を
ある程度自分のなかで消化しつつあります。
彼の兄はアメリカのジュニアボーディングスクールから、
3.5-4ランクに相当するボーディングスクールで学び、
現在都内の私立大学に在学中です。
兄とは仲良くなさそうなこの青年は、残念なことに兄から
海外で学ぶ苦労は聞かされても、楽しさや喜びはあまり教えられて
いないようです。兄弟とは不思議なものです。
小さい頃から一緒に過ごしていても、性格は全く違います。
小学校くらいまでは、性格の違いなど意識せず、お互いに遊べても、
思春期になり、自分を見つめるようになり、
性格が「個人思想」といった段階まで昇華し、まじりあえない、
打ち解けられない、お互いに依怙地になるようなことが
たくさんあるように思えます。
青年がニュージーランドに出かける前、お母さん、
本人とのカウンセリング時に、兄が同席しました。
私はいつものように、苦労は自分のため、異文化に映す自分を
見つめ、新たな世界に夢をつなげるといった浪花節を語ります。
兄は深くうなずき、大学生ではあるものの、自家製の名刺を
私に差し出し、私の話に共感したことを、態度で表現していました。
弟はそれを知らぬ顔で虚空をながめる様子。
所用のため中座した兄は、帰り際に弟にえばるのではないけれども
すなおに威圧的に言います。
「これだけは言っておく。留学はおまえがきめろ。人に決められるほど甘いものではない」
そして彼は、私に顔を向けると、えみを浮かべて、
「斉藤さん、お世話になります」といって、去ってゆきました。
青年は終始無言です。彼のとってみれば、父親のような兄の言葉に
どう反応して良いか解らないのでしょう。
「おせっかい」とも言えず、かといって「ありがとう」とも到底言えません。
まっとうに生きるという考え方は兄と共有できても、
身近な目標設定や問題解決に至る方法が極端に違うために、
発する言葉が青年には見つからないのです。
兄も弟の心根は受け入れられても、日々の行いは容認できないため、
否定がかさぶたみたいになって、そのすばらしい受容性を
近親の弟には発揮できない。
お母さんは「困ったものだ」とため息をつきます。
しかし、母親としてお母さんの愛情が無意識に兄弟に徹底しているから、
青年の階段を上りつつある「弟」も留学を考えるまでに成長しています。
つづく

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