ペアレンツウィークエンド
アメリカ、カナダの多くのボーディングスクールで、10月中・下旬にペアレンツウィークエンドが開かれます。このイベントの狙いは親を学校に招くことで、寮生たちを、寮生活初期に誰でも陥る里心やホームシック、その寂しさや孤独感から解放しようというものです。
日本の学校では、大学を中心にして5月病という現象がよく聞かれます。入学してほぼ1か月という時期がペアレンツウィークエンドの時期と合致しています。大学生と中学・高校の寮生という立場的、状況的な違いがあることを承知のうえでも、日本では生徒たちの寂しさや孤独感を一過性の病気としてとらえようとするのに対して、英語圏では、あえて親を学校に招いて、子どもと過ごさせる時間を与え、さらには週末を寮から出すという徹底した積極的措置を施すところが、いかにも英語圏の文化を象徴していると思えます。
耐えしのぶのではなくて、親を巻き込んで、子どもたちを楽しませる、元気づける、励ますのが、いかにも大陸的、楽天的、効果的ではないでしょうか。
通常のペアレンツウィークエンドのスケジュールは、木・金曜日に授業参観、先生と親とのミーティング、全体ミーティング、親睦会、土曜日が生徒たちの演劇発表、スポーツイベント見学などの催し物、そのあと解散で学校に子どもたちが帰ってくるのは、月曜日ないしは火曜日の夕方ということになっています。
10年前と比べて、日本からこのイベントに参加するご家族は増えていると思います。特に、留学年齢が高校から中学校まで下がりつつありますから、留学1か月後という時期は、英語力が不完全、友達は皆無、生活習慣の違い、食べ物への違和感などから、ホームシックや寂しさに圧倒されてもやむを得ない時期です。
日本的思考であれば、親がこの時期に会っては、「里心を増長する」と考えられがちですが、英語圏の論理は、「こんな時こそ、親の存在を子どもにアピールするとき」と考えているようです。
ペアレンツウィークエンドに参加したお父さんあるいはお母さんは、「君は、すでに自立の一歩を歩みだしたのだ。さあ、家族で祝おう、楽しもう、そして新たな寮生活、学校生活にチャレンジしてほしい」などと、めそめそしているわが子に向かって言うでしょう。You can if you will!!私は、このようなカラッとした精神性が北米のボーディングスクールを支えてきたひとつの柱だと思います。
感謝祭の1週間以上の休み期間と違って、このペアレンツウィークエンドに親が参加できない留学生たちは学校が責任をもってお世話をしてくれます。ペアレンツウィークエンドに親が来ないからといって、学校をやめる留学生はもちろんいませんが、この時期をひとりで過ごさなければならない日本からの留学生は少しばかり寂しいかもしれません。そんな時は、アドバイザーの先生と話してみる、同じような立場の留学生に「思い切って」話しかけてみる、日本の親に長めの電話をするなどで寂しさを忘れるようなことをしてみることです。
ルームメイトと仲良くなった留学生の中には、ルームメイトのペアレンツに招かれて、数日間のホームステイにチャレンジしている生徒もいます。