震災後の日本のイノベーション その1
日曜コラムでご紹介した、野中郁次郎さんと黒川清さんの
セミナーですが、震災後の日本の変革を支える、
両氏の根本理念はリーダーたちの意識改革でした。
黒川さんがその象徴としてあげたのが、日本人が持つ世界観(出世観)です。
東大の法学部に入り、大蔵省(財務省)に入省し、主計局に行き、
そこで局長となることを挙げられました。
今でも、入省年度や、ポジションで序列が決められていて、
その「構造」は大変ゆるぎない。能力による評価でなく、
コンボイシステム(護送船団システム)であるというわけです。
欧米の場合、構造よりも個人の「機能」が優先されるため、
能力差による昇進などは年齢や立場に関係が薄く、
日本的にいえばより不平等な構造であると黒川さんは
分析していました。
「日本の信用が震災による原発事故でメルトダウンしてしまった。
なぜか、それは問題解決を図ろうとする人々にそもそも知的好奇心がなく、
知力の劣化がはなはだしいからだ」と彼は述べています。
過去20年間、世界は地球の歴史が始まって以来未曾有の人口増加が
ありました。加えて、情報革命により、チュニジアやエジプトに
代表されるように、今まで秘匿されていた
一部の独裁者の横暴が暴露されるなかで、日本の今回の災難も、
その対応が世界に公開され、日本の「権威」が地に落ちてしまったと
黒川さんは分析します。
日本という視点から考えられたグローバリゼーションは役に立たない
そのように明言される黒川さんは、ご自身が東大医学部の出身でありながら、
ペンシルバニア大学(野口英世博士が学んだ学校です)、UCLAで学び、
研究し、教鞭をとるなど、知的好奇心に対してとても素直で、理不尽な権威に
納得せずに、社会に貢献することの正義を貫いておられると思います。
日本の医療の現場も、政府関連のリーダーシップをとる機関にも
複数所属した経験を持つ黒田さんは、とても日本の現状に憂いています。
「所属したところから改革すればいいのに」と思うのですが、
とても、一人では太刀打ちできない組織の壁は厚いのだと思います。
故に、75歳になっても、元気はつらつでまだまだやらなけれならないと、
夜の10時まで若い人たちとつき合っていられる、むしろそうしなければ、
使命は果たせないとご自身が思っておられることでしょう。
高い志とあつい想いに支えられた知的好奇心をとても大切にする
黒田さんは、「(日本の)タテ構造は、必ず負ける」と結ばれました。
彼とふたまわり弱離れた私としては、より徹底して若い世代に
世界から日本を見ることができるように、私の「経験知」を提供することを
自らの使命として全うしたく思います。