中学・高校留学-無人島での15歳3:冒険
無人島の比喩から始まった今週のブログですが、3回目は
孤独を克服した次の段階を考えてみたいと思います。
皆さんが無人島に行ったとして、生きてゆくために何を確保しますか。
食べることと、安全に住むところが優先されると思います。
私は「無人島の比喩」をカウンセリングなどでは、
現代の子どもたちの生きる力をわかりやすく、
説明するために象徴的に用いています。
ジャングルを走り回り、食べるものを取り、雨風をしのげる
住みかをどのように作ってゆくかなど、具体的方法は述べていません。
私のイメージの世界で原始の人間と現代に共通するDNAを
考えてみて、思い当たることに「冒険」があります。
文化、文明を取っ払ったところまで、さかのぼったとして、
私たち人類の祖先が生存をかけて、絶えず移動したと空想すると、
10代の子どもたちに寸分、その精神は心の一部に残っているのではないか。
それが新たな環境で彼らの好奇心を刺激し、好奇心は既成概念を取り払う。
人に諭されたり、指示されるのではなく、自らそれを求める。
そうするほうが新環境に適応しやすいからです。
「今までのことにこだわっていたら、やってられない」
子どもたちは思い始めるのだと思います。その気持ちが
生きてゆく原点に帰ってゆくと私は想像を猛くします。
余談ですが、あるお母さんが留学3年目のわが子から、
「驚きと感動の電話」がなくなったと寂しがっていました。
-もーすっごいの、ここの子たちって、ぜーんぜん算数できないし
-ねえ、きいてきいて、あたしオーナーロール(成績優秀賞)とったよ
-あそこのチャイフー(中華料理)、めっちゃおいしい
もちろん、驚きと感動がある分、不満と焦燥もたくさん
お母さんは受け止められたと思います。
-今日はすっごく頭にきた。イラつくあの先生
-なんでここの子って、気をつかうことを知らないんだろう
-あー、嫌になっちゃう。勉強が追いつかない
留学生が到達するその「原点」とは何かに戻ります。
私は「優しさ」であると思います。
「冒険心がなぜ優しさ?」
という質問が聞こえてきます。はい、有史以前の歴史に言及し
一気にワープしてしまったことをお詫びします。
なぜ、冒険→好奇心→原点回帰→優しさとなるかですが、
これは私の留学生との付き合いから生まれた実感です。
寂しさや孤独に圧倒されても、彼らは「生きてゆくため」に
人を欺いたり、嘘を糊塗したりしません。
そうすることも時としてはあるかもしれませんが、
結果としてその方向には進みません。
相手の欠点をことさらに追求し、自己主張を繰り返しはしません。
それよりも、弱く、不安で、劣勢な自分を認めて生かしてくれる、
そんな異文化に彼らは人の原点を見出すのだと思います。
その精神は「優しさ」、「思いやり」であると私は実感します。