日曜コラム 読書について
読書は生徒にとっては必然であると思います。
TABS、SSATの共通願書には、過去1年間で自分が最も感銘を
受けた本についての感想を求められます。
ボーディングスクールでは、夏休みに課題図書が出されて、
生徒たちはそれを読んで秋の新学期の英語クラスをスタートします。
留学を希望する生徒についても、読書が好きという生徒は、
おおよそが学業的にも良い実績を残しているように思います。
生徒と一緒に学校訪問の旅をしていて、ドライブ中に「三国志」を
熱心に読んでいる生徒がいましたが、その生徒は第一志望の
ジュニアボーディングスクールに入学することが出来ました。
学ぶということと読書をボーディングスクールではとても
重要視しているように思います。
最近、読書好きの友人とお互いが親しくなったきっかけ
エピソードのことについて話す機会がありました。
二人とも高橋和巳という作家が好きだったのですが、
彼は、日本を代表するSF作家故小松左京さんと京都大学の同期でした。
二人は、京都大学在学中、フランス文学者、
桑原武夫先生の文学概論のクラスで
「文学は人生にとって必要か、ただし必要という観点から述べよ」という
課題を出されます。
これに対して、高橋和巳は「人生は文学にとって必要か」という
自らの文学論を展開してAをもらったそうです。
高橋和巳という人は、相当な読書家であり、膨大な知識をもって、
当時の学生運動に対して賛同的であり、自らの文学を追求した人でした。
私もその友人も読書は好きだけど、ビジネスの世界で高橋和巳に
興味を持つ人はいないだろうとお互い勝手に想像していたのでした。
しかし、「現実」は、あれから30年ほども過ぎた今でも、
高橋和巳のエッセイ、「人間にとって」の冒頭、か
「ショーペンハウエルによれば、自己否定は芸術家の慶賀されるべき徽章であるという。なぜかというと・・・」
この文章は、私にとって、一生色あせしない、読書の楽しみ、
文学という宇宙の広がりにも匹敵するような人の考え方のありようの一端を
教えてくれます。
読書をしなくても、人は生きていけます。
それなしでも、成功している人もたくさんいると思います。
読む形態も現代では、多様に変化しています。
そのなかで、読書はこれからも人々に心の宇宙を提供してくれると思います。