日曜コラム 二男の糸トンボ事件
文化の日に20年ほど前にお世話になった方からメールをいただきました。
当時、岐阜県の村の教育委員長であったその方は、
自らの海外経験を生かして、AFSの地区委員もやられていて、
海外からの長期短期留学生をご自宅で受けいれていました。
結果として、私はその方が中心となり、村の中学生のために企画された、
サマープログラムの添乗員として、91年より5年間、30名ほどの中学生を
アメリカペンシルバニア州、ランカスターに引率しました。
10日間、彼らおよび引率の先生と現地で一緒に過ごしましたが、
ワシントンDCへのツアー、スミソニアン博物館への訪問、アーミッシュの人々との出会い、ランカスターでのホームステイ、遅い夏の夕暮れ時の蛍の乱舞など、
今でも鮮明にペンシルバニアの夏を覚えています。
とても懐かしいその方からのメールを拝見して、
その方のお家に家族でおじゃました時のことを家内と懐かしく思い出しました。
家内は私に「糸トンボ事件のこと、覚えてる(?)」と聞きました。
昆虫に興味のあったわが家の二男は、長良川の上流の風光明美なその地で、
楽しく過ごし、糸トンボを捕まえて羽を挟んで車内に持ち込もうとしたのですが、
家内あるいは長男にぶつかった拍子に糸トンボの尻尾が切れてしまう。
「トンボが死んじゃう」と二男は大泣きして、泣きやまない。困った家内は、
「糸トンボの尻尾は再生するから逃せばよい」とウソをつく。
二男は、泣きやみ、捕まえていた糸トンボの尻尾の再生を願って社外に放す。
これで一幕が完結します。
自宅に帰り、公園でトンボを捕まえた二男は、そこにいた近所のおばちゃんに
「トンボの尻尾は再生する」と誇らしげに語る。
すると、そのおばちゃんは、「トカゲと違って、トンボの尻尾は再生しない」と
二男に言って聞かせる。おそらく、二男が納得するような詳しい解説も
あったと思われます。
二男はそれを聞き、すっとんでわが家にとって返し、
糸トンボの尻尾が再生しないことの真偽を家内に問う。
家内は自分のウソを認めるような発言をすることになる。
それ以降、二男は昆虫図鑑の解説を家内に求めなくなったそうです。
その本を持っては、近所のおばちゃんの所に通っていたようです。
以前にこのコラムで紹介させていただいた二男ですが、
結局彼は、生物好きであることをやめず、高校で生物部に属し、
学校の前を流れる小さな田舎の小川で生物の生態観察に勉強よりも
力を入れ、大学では蜜蜂研究会に属して、その大学の伝統のようですが、
文化祭で売られる蜂蜜の金額が一千万円を超えるとのことでした。
今は、養蜂家として自立すべく、千葉の田舎でアルバイトをしながら、
養蜂の道を歩み始めました。
懐かしい方からのメールから、家内が私に話した昔話に、
私は、子どもたちの今を重ね納得しています。
好きなことに信念を持ち、こころを燃やし続けてほしいと思います。
それは、自分に言い聞かせていることでもあります。