中高生の留学 - コンサルティングについて
いろいろなご家族が留学相談にやってきます。私の専門は中等教育に関する留学ですから、当然相談にやってくるお父さん、お母さんは四十代の人が多く、三十代も珍しくはありません。コンサルティングに関しては、自らパターンを決めているということはありません。あくまでも自然に、相談に来た人たちが納得するように、彼らが必要とする情報はなるべく提供することを心がけています。私は一方通行の話が嫌いです。双方が納得して理解できるように話し、また相手の話を聞くのが私の大きな仕事であると思っています。
さて、コンサルティングで初めの三十分くらいは、こちらの自己紹介と言っていいと思います。私が何を知っていて、何を提供できるのかということを説明します。次の三十分くらいは、相談者からの質問に答え、留学する主人公の考え方や家族の方針などを聞き、私なりにそれぞれの家族の文化をイメージします。そして、最後の三十分から四十分は生き方、価値観などの交換をします。相談者にしてみれば、大切なわが子を海外の学校に預けるわけですから、その面倒を見るコンサルタントとの相性はとても重要です。
相談に来られたファミリーが当社に申し込まれても、あるいは申し込まれなくても、留学する本人を連れてきた場合は、おおよその親、特にお父さんに共通してみられる行動と言動があります。それは、留学する本人の態度や言葉へのお父さんなりの無意識とも言える反応です。それは、
「相手の目をみて話せ」
「返事ははっきりとせよ」
「背筋を伸ばせ」
「ひじをテーブルにつくな」
「おい、どこ見てる、人の話はちゃんと聞け」というお父さんもいます。話せば、話すほどわが子の態度が気になるのでしょう。もちろん、コンサルティングの始めからお父さんが、わが子に注意するわけではないのです。留学ということが特殊なことではなく、私が「生きる力」があるかどうかなどと、漠然とした表現であっても、生きる価値観がお父さん、お母さんに通じるころから、親の態度に明確な変化が見られるのです。
なぜ、お父さんのほうが、お母さんよりもつい口が出てしまうのでしょうか。私の推測は、お父さんは日々の生活のなかで、いろいろな人と接することが多く、人間関係に苦労すればするほど、学歴や資格などの既成事実よりも、その人、そのものが持っている、生きる価値観や考え方が実は重要であることが、身についているからだと思います。
もちろん、お母さんにそのような考えがないわけではありません。しかし、日々わが子と接することの多いお母さんのほうが、冷静にわが子の言動や行動を観察できるのだと思います。だから、その場で注意しなくても、家に本人への「注意」あるいは「評価」を持ち帰ることができるのだと思います。
そもそも教育の目指すところは、それを学ぶ人が幸せになるために、ひいては、人が社会でお互いに幸せに暮らせるために考案された人間の知恵の集大成であると思います。ですから、相手を尊重することは、文化を超えた人の社会の基本ルールです。それができずに、高等数学ができてもダメなのです。それがわかっているから、親は無意識にわが子に反応してしまうのでしょう。
<つづく>