高校生の留学体験 ― 友達に支えられて(*熊原智恵さんの手記)
「高校留学というと、多くの人が英語の上達を目的とします。それも少しはあるかもしれません。けれども、私が留学をして一番得たものは『友だち』です。彼らはすごく楽しかった時、つらかった時そのものの結晶なのです。」 ― 留学中の学校生活のなかで友だち果たす役割の偉大さ、大切さが伝わってくるフレーズです。そして、彼女は無意識に英語の上達の重要性を「少し」と表現しています。
熊原さんは表現豊かに、彼女が留学して出会った人たちを描いていきます。「お昼休み、ふざけてマッシュポテトで絵を描いたら、『アメリカ人ぽくっていい』とほめてくれた友だち。変な言葉をかけてくれた友だち。なぜかいつも踊っている人。目が合うと『チェ!』と叫んでくる子やふざけてくる友だち。いきなりチョコチョコしてきたり、思いっきり後ろからお尻を叩いてきたり・・・。すっごく笑顔がかわいかったり、歌声がきれいだったりする友だち。美術の授業で課題が遅れて、私と一緒に別室に隔離された友だち。図書室の先生の目を避けつつ筆談をした思い出。頭が良くて宿題をいつも助けてくれた友だち。ソロがうまく吹けた時に拍手してくれたバンドの仲間。すごくバスケットのうまい友だち。何かお願いするとたいてい聞いてくれる人のいい友だち。歌って笑ってともに泣いたソフトボールの仲間。」
留学だけでなく、私たちは日常の生活において、「友だち」なしではやっていけません。学校や職場で日々、広義な意味での友だちとの関係性のなかで、私たちは生きていると思います。
彼女が描いた異文化での友だち諸君は、とても個性的でそれなりにユニークです。そして、熊原さんの留学生活のなかで、慣れるにしたがって、彼女と友だちとの距離が近づいていったように思います。熊原さんは正直に「留学したことによってマイナスになることもある」と述べています。しかし、友だち表現とはうらはらにマイナスの具体例を彼女は一つとして挙げていません。そして、「もし留学しなかったら決して得られなかったことを、留学によって得た」と結んでいます。
熊原さんに私はメッセージを送りたいと思います。 ― あなたが留学で得たかけがえのないことは、新たなあなた自身の発見ではなかったでしょうか。友だちとは、それを助けてくれる、あなたのこころの鏡だと思います。すなおに自分を表現し、好奇心をうまく活かせたから、たくさんの人が君に共感し、応援してくれました。そして、君は彼らに惜しみない感謝の気持ちを表現したことでしょう。
学ぶことの原点を君は留学で自然に体験したと思います。なぜ学ぶのか、大学に入り、よい人生を送るためではありません。人や社会の常識的、偏差値的範囲内で自分の人生は決められません。私は、学ぶとは、すなおな自分のこころの眼が望むことを追求していくことだと思います。結局、自分がハッピーになるために学ぶのではないでしょうか。そのためには、人をハッピーにしなければなりません。
あなたのハッピネス、これからも旺盛な好奇心とすなおさで「友だち」の皆さんと一緒に探し求めてください。
(*注:熊原智恵さんの手記は成功する留学、小・中・高生の留学2001-2002、101ページに掲載されています。)